2006年で良かった同人誌

'05冬コミから'06冬コミ直前までの同人誌から1サークル1冊で。10冊に絞れなかったので15冊。後に再録されてオフセットになった本もあるが気にしない。インパクト重視。

  • (東京大学漫画調査班TMR)「TMR第43回調査報告別冊 コミック誌123選」
    • コミック誌レビュー本。労作で力作。123誌という量の時点で凄いですし、東大という先入観で読むとひっくり返りそうな程砕けた文体だったりもするのですが、レビューを単純に採点で済ましてしまわないなど、評する雑誌との距離の取り方や、読者への配慮などもきっちり考えられている良く出来た本。自分のことを"現役の漫画好き"と思っている人なら、なにかしら刺激を受けることが出来る本になっています。まぁ読んで腹立てる人も居ると思いますが。年5回発行の会誌の本誌は、更に濃くてオレには面白いのですが、とっつきやすさとこの本のみ通販(メロン)もしている事もあってこちらを選びました。漫画好きの高校生はみんな東大へ入学してTMRに入るとよいよ。
  • RAITA(絶対少女)「魔法少女総集編」
    • 18禁のオリジナルの魔法少女本。のっけから総集編ですんません。前から繊細な線のなかなか魅力的な画を描く人だとは思っていたのですが、この本を読んで"こんなエロい漫画を描ける人だったのか"、と目覚めさせられた本。おとなしい魔女っ娘さんに、"心が読める"というギミックを付加しただけで、いじらしいやらエロいやらでもう大変なことに。
  • こんもり(近傍租界)「青のクオリア
    • 18禁のARIA本。こんもりさんといえば、"おっぱいとしりのスゴイイラストの人"という認識だったのですが、この本で"おっぱいとしりのスゴイ漫画の人"という認識に変わりました。ここ数年で画の良さを生かしながら漫画にする腕をメキメキ上げていたのですが、この本がひとつの金字塔的作品になったと思います。単純にネタがオレの好みというのもありますが。プロの漫画家さんにえらそうなこと書いてすんません。
  • さんずい(酸欠集)「グレーテルさん気をつけて」
    • 18禁のおとぎ銃士赤ずきん本。ネタの咀嚼力、再構築力がとても高い人なので、元ネタのことを知らなくても面白く読める。そして、再構築の際に入れる毒とエロのスパイスが大変良い。
  • 早乙女もんどのすけ(早乙女けんきゅう所)「させっ子OS SP2/UPG」
    • 18禁のXpたん本。超UNK。コピー誌の再録+書き下ろしの本なのですが、とにもかくにもカラー表紙のインパクトに尽きるでしょう。下品すぎて人に見せたくなったのは初めてでした。はやしだくん見てくれてありがとう。
  • 濃縮メチル(深海潜行)「GUNNER'S HEAVEN」(コピー誌)
    • 18禁のガンスリ本。RAITAを更に尖らせて神経質そうにした危ういバランスの責め絵を描く人。夏コミ会場で初めて見かけて、"凄いのに出会ってしまった感"を久々に感じた。活動を追っかけようと思っていたのですが、冬コミ会場では見かけられず残念。
  • mokeke(東京CONFESSION)「東京CONFESSION特製タダコピー本」(コピー誌)
    • 18禁のオリジナル露出少女本。mokekeさんは過去単行本も出してるエロ漫画家*1ではあるのですが、露出好きな少女が高揚しながら家を出るってだけの短編ながら、その高揚感が読み手の俺にダイレクトに伝わる漫画の上手さに脱帽。こういうエロ漫画はいまや商業誌にも存在しない。おにんにんをどうこうするだけがエロ漫画じゃないということを再確認。
  • 小川びい藤津亮太小原篤・M(仮名)(私設時かけ応援団)「夏は時かけ、もう決まり放談」
    • 夏コミ発行の時をかける少女アニメ関係者対談本。名の知れた人が同人ならではのディープな話題をしていることと、自分の中で最も盛り上がっていたタイミングぴったりに発行された、その相乗効果で大満足だった1冊。これが冬コミだったとしたら遅すぎたんですよね。
  • 俊俊(サマーギフトくらぶ)「おいでよ マシュマロの街」
    • マシュマロ通信(+山本ルンルン全般)パロディー本。一言で言えば、私にとって去年は俊俊さんに出会った年でした。この人は、ネタの咀嚼力・再構築力が高い上に、ある種天才的な台詞回しを考え出す力も持っていて、作品を気の抜けた"いい感じ"に下品なギャグマンガに仕上げることが出来る稀有な人。画だけ見ても良さは絶対判らないので、是非ともどこかで読んでみてください。
  • ちょんげら(ちょんげら研究所)「がんばれジャスミン メイクイーンへの道」
    • マシュマロ通信中心ごちゃ混ぜパロディー本。加藤礼次郎っぽい力強い画を描く人。この人はネタの再構成力が半端ではなく、嬉々として好きなものに好きなものを組み合わせます(例:マイメロディ+山城新伍)。その力技具合を楽しめるかが肝。この本は、マシュ通からどれみからプリキュアから特撮戦隊ものまでごった煮にした特濃の一冊。ちょんげらさんとの出合いがこの本だった私は、一発でやられました。
  • 平野まさのり(Black Dwarf)「真田ぬこの正像」(コピー誌)
    • オリジナル猫漫画。欧米風なタッチで強めにデフォルメされたなかなか見かけない画を描く人。この作品は、8コマのサイレント漫画という体裁なのですが、この4コマ×2の8コマというのが作品の肝になっていて、均等に配置された8コマをショートアニメのように使って、やや擬人化されたネコの馬鹿っぽくも愛らしい動きを淡々と描いています。作品に流れる弛緩した空気がたいへん良い感じ。
  • 野口摩擦(TRIBO)「MENISCUSKA UMA-holica」
    • 18禁のオリジナルメガネっ娘馬委員長漫画。簡単に書けば、眼鏡をかけた言葉を話す委員長属性の牝馬にエロいことをする漫画。最低限の擬人化で牝馬に欲情できるのか、というエロ漫画の限界に挑戦するかような漫画。是非皆さんも一度挑戦してもらいたい。オレは欲情した。
  • 子毬和(人間もどき)「ゆめうつつ、ゆめ」
    • オリジナル。同人レベルを遥かに超えた画力と漫画力で、同人界にはまだまだ凄い人が眠ってるんだなぁ、と思わされた作品。その後あっという間に商業誌にデビューしてた。そりゃそうだ。若い人なので成長を期待しつつ長い目で見ていきたい、なんて思っていたら、学校を辞めてしまったらしく酷く心配。
  • イトマヒトリ(極上レジスタンス)「×○日記 下町ラーメンプリンセス」(コピー誌)
    • 機動戦艦ナデシコパロ本。作者の暇さんは、元ネタをしっかり咀嚼して、自分の得意な世界に再構成する力を揺るがないレベルで確立されている方。暇さんのフィルターを通すと、キャラクターや世界に生っぽさ*2が増して、生き生きと欲望を全面に出して動き出します。年間20冊近い同人誌を発行する超人的な生産力にも脱帽なのですが、発行する同人誌が皆レベル高いのも凄い。この本は4コマ漫画の連作になっていて、4コマ漫画の1エピソードの積み重ねで大きな話の流れを作るなど、作品の勢いがあまりに強くて目立ちにくい暇さんの芸の細かさが表に出ていて特にオレ好みでした。ちなみにオレはナデシコ観た事ありません。
  • 奴隷ジャッキー(あかいのとか)「アスカちんご乱心 IN X'mas」(コピー誌)
    • 18禁のエヴァシンジ×アスカ本。プロなので作風の説明は省略。18禁といってもシンジがひたすらアスカの乳を揉んだり吸ったり顔をうずめたりはさんだりするだけ。プロなのに、というより、プロだからこそ出来たというべきか、衝動だけで1冊作り上げたかのような、突き抜けた清清しさまで感じる本。こういうの大好き。

*1:之瀬ハルオ名義

*2:人間っぽさや、動物っぽさと言い換えてもいいけど。